車椅子、ときどき杖。

外出には車椅子を使っています。ときどき杖も使います。車椅子で訪れたスポットや、普通に歩いていた頃には気づかなかったいろいろや、便利だと思う道具について。

車椅子で使いやすい設備、いろいろ。

車椅子を使うようになって4年と少し経ちました。

外出していると、歩いていたときには気がついていなかった様々な設備の工夫が目に留まります。

今回はその中のいくつかについて、私が感じた「車椅子で使いやすいところ」をご紹介します。

 

 多目的(多機能)トイレ

車椅子を使う前にほとんど馴染みがなかった施設と言えば、多目的(多機能)トイレ。

一般のトイレは車椅子で入れないので、外出時は多目的トイレを使用します。車椅子で使いやすい特徴は、以下の通りです。

 

【扉が引き戸】

 開き戸(ドアタイプ)を車椅子で開閉することはとても困難です。

 

【室内で車いすを方向転換させるスペースがある】

 入室してすぐ鍵を閉めるために後ろを向く必要があるので、その場で旋回できるスペースが必要です。

 

【便座へ乗り移るための手すりがある】

 乗り移りだけでなく、座位を保つのにも手すりは必要です。

 

【洗面台が低い位置にあり手が洗いやすい】

 一般のトイレ内に広い個室があるタイプのトイレを使用したことがあるのですが、洗面台が高くて手を洗うのに苦労しました。立って手を洗うのと座って洗うのとでは快適な位置が違いますね。

 

【洗面台の鏡が低い位置まで(もしくは斜め下向きに)設置してあるので車椅子のまま顔が映る】

 これも一般のトイレで広い個室を使用した時に感じたのですが、鏡の位置が高くて顔が見えませんでした。

 

特に便利だと思った多目的トイレの設備は、便座横の壁に設置された手洗い器です。用を足したあと、車椅子を触る前に手が洗えます。

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便座右手にあるL字手すりの壁にまとめられた設備。手洗いは自動水栓。(近鉄百貨店奈良店)

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こちらは便座左手の壁にまとめられた設備。ここの手洗い器は洗面台と揃いのデザインだった。(奈良県庁東棟)

 私は杖をついていた時、一般のトイレを使用していましたが、手を洗う時は洗面台にもたれて身体を支えないと両手を放すことができませんでした。当時は多目的トイレを使うという意識はありませんでしたが、当時の私のように支えがないと立てない場合にも座ったまま両手が洗えてとても便利だと思います。

 

手を乾かすドライヤーの差し入れ口が低いのもありがたいです。横に差し入れるタイプや温風が下に噴き出すタイプも使いやすいと感じました。

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洗面台と同じ高さに手の差込口があり使いやすい。(奈良医大付属病院)

 

オストメイト利用者用の設備が整ったトイレや、赤ちゃんだけでなく大人も使用できるおむつ替えシートのあるトイレも増えています。

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写真右は大人も使用できるおむつ替えシート。ちなみに左にあるのはフィッティングシートで、靴を脱いで着替えができる。(近鉄百貨店奈良店)

 

ドアの開閉や水洗ボタンがタッチセンサーだと力がいりませんが、私は姿勢によっては手の位置を感知されるまでの時間じっと保っているのが難しい場合もあるので、感度がいいと助かります。

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一般的なドア自動開閉ボタン。少々強めに押さないと反応しないものもある。

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ちょっとおしゃれなタイプの自動開閉ボタン。これは軽く押すだけで反応した。

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ドア開閉センサー。力がいらないのでありがたい。

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一般的な手動の引き戸。まれにとても重い場合があり、開けるのに苦労することも。

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手動扉の一般的な鍵。この状態が施錠の場合もあれば、上げたり下げたりして施錠するパターンも。

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手動扉の鍵の工夫。つまむ部分が広くなっていてつまみやすい。(奈良医大付属病院)

扉の工夫は他にもいろいろ発見があったので、また改めて紹介したいと思います。

 

先日、初めて車椅子で新幹線車内の多目的トイレを利用しました。

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省スペースかつ空間確保のために引き戸がカーブしている新幹線車内の多目的トイレ。

ものすごく揺れるので酔いそうになりました。揺れる車内で車椅子から便座へ移動するのはかなり緊張します。手すりはがっちり持ちましょう。写真では判りにくいですが、このトイレも便座の脇に手洗い器がありました。ただ、揺れるので手すりから手を放すのが難しく、私は洗面台で洗いました。 

ひとつ注意が必要なのは、扉の施錠です。通常の多目的トイレは自動開閉扉の場合、内側の閉ボタンを押せば自動的に施錠されますが、新幹線の多目的トイレは自動では施錠されません。必ず鍵を倒しましょう(おそらく鍵を倒すことで客車にある使用中ランプが点灯するのだと思います)。

 

エレベーター

歩いていた時は何気なく使っていたエレベーターも、車椅子で利用するといろいろと発見があります。


【低い位置に操作盤があると自分で操作できる】

 かごの側面の壁に設置されていることが多いですが、逆に言えばここに操作盤のないタイプのエレベーターに遭遇すると大変困る場合も。私は車椅子の肘置きなどに手をつけば立ち上がれるので、何とか対応しています。

 

【奥の壁にある鏡は車椅子がバックで出て行く時に後方確認するためのもの】

 できればかごの中で方向転換して前進で出ていけると安全ですが、難しい場合は鏡を見ながらバックで出ます。ただ、周囲にいる「鏡を背面にして立つ人」からすると鏡を見る私はただ前を向いているだけに見えるでしょうから、「このままバックで出ます」など声を出して周囲に自分の動きを予測してもらえるように気を付けています。


エレベーターの扉が前後にあるタイプはそのまま前進して出られるのでとても楽です。扉の上部にバックミラーが設置されています。車椅子では後ろを振り向くのが難しいので、ミラーで後方に乗る人が他にいないか確認します。

ただ、複数階に停止する場合は階によって後ろの扉が開くこともあるので、その時はなるべく方向転換して出ます。難しい時は注意を払ってバックします。

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前後に扉のあるエレベーター。写真では左の壁の操作盤を押している。

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前後に扉があるエレベーターではなるべく前進で出たい。

百貨店やショッピングモールなどの大きな建物以外のエレベーターの出入口は、上の写真のように車椅子がちょうど通れる程度の幅であることが多いです。先に降りた方が扉を押さえて閉まらないようにしてくださることがよくあるのですが、その方の身体に車椅子が当たってしまいそうになることもあります。せっかくのご厚意にとても心苦しいので、もし「手を貸してやろう」と思ってくださった場合は、降りてからそのフロアにあるボタンを押していただければ非常にありがたいです。

 

公衆電話

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JR京都駅新幹線ホームに並んでいた公衆電話。

私は歩いていた頃、低い位置にある公衆電話は子供用だと思っていました。先日、新幹線のホームで久しぶりにその低い公衆電話を見かけたのですが、いま改めて見てみると、これは車椅子で使いやすい高さなのですね。

ネット検索してみたところ、「建築物等に関する整備基準」として「公衆電話台を設ける場合は高齢者、障害者等が円滑に利用できる構造とする」という文面を目にしました。また、NTTのホームページにも福祉対策のページがありました。そういえば車椅子で入れる大きな公衆電話ボックスも見かけます。

参考:福祉対策(公衆電話インフォメーション) | 公開情報 | 企業情報 | NTT東日本

 歩いていた頃の私には見えていませんでしたが、以前から街には車椅子で使いやすい工夫があったのだな、と嬉しくなりました。