アートを楽しむ場所としてまず思い浮かぶのは、美術館、博物館、そしてギャラリーではないでしょうか。
美術館や博物館は、ありがたいことに、たいていの建物に車椅子で入れます。
車椅子ユーザーになってからも、奈良や大阪、京都、東京、福岡の美術館・博物館を訪ねたことがあります。
けれども、町なかにある小さなギャラリーとなると、なかなかそうはいきません。
いいなと思う展示の情報を得たり、ふらっと通りかかったギャラリーで好みの展示を見つけても、階段しかない小さな建物だったり、スペースが難しかったりして、入るのを諦めることって割とあったりするんですよね。
いま奈良県で開催されているアート祭典の公式ガイドブック「奈良県大芸祭・障芸祭Walker」に掲載されていたギャラリーが、車椅子で安心して楽しめたので、ご紹介します。
「アートスペース上三条」さんです。
1階にカフェスペースと多目的トイレがあり、2階がギャラリースペースです。そして、2階へ上がるエレベーターもあるんです。
エレベーターの隣に、男女別で広いトイレが。
車椅子で入れるトイレがあるという安心感は、とてもありがたいことです。ほんとうに。
私が訪ねた10月初旬、ギャラリースペースでの展覧会は2つでした。
ひとつは、「榎森彰子 大和てくてく ふだん歩き展」。
不透明水彩絵の具の三原色と白色のみで描かれるのは、奈良のごく普通の風景。何処かで見たことのあるような、身近で懐かしい風景が、やわらかな色合いで描かれています。
中でも、私がとても好きになった絵が、こちら。
榎森彰子 画「奈良市高畑町 瑜伽神社あたり」
サビたトタンの壁や、黄色と黒のカバーがついた電信柱、子供たちの声が聞こえてきそうな路地。この道は私の知っている場所ではないはずなのに、この風景を私は知っている、そんな風に思えて、しばらくこの絵の前から動くことができませんでした。
榎森彰子さんの展覧会は、11月23日(金・祝)~12月4日(火)まで、近鉄奈良駅すぐの小西さくら通りにある「啓林堂書店奈良店 よもやーろギャラリー」でも開催されます。
もうひとつの展示「山口光司 ジュエリー展」では、物語のあるデザインのシルバーアクセサリー「moge」がすてきでした。
月夜に寄り添う猫。リングの内側で2匹のしっぽがハートを描いているのは、身に付けた人だけが知っている訳です。ものすごくすてきじゃないですか?
私のスマホではきれいに撮れなかった鳥たち。オカメインコとエナガ。ふわふわした愛らしさがもうたまりません。
「同じ月を見てた」。ふたつのペンダントで、オオカミとヤギが同じ月を見上げています。並べると曲線が添うように合わさるのがすてき。
他にもたくさん、じっくりゆっくり眺めさせてもらいました。写真の掲載を許可いただいたのに、スマホではきれいに撮れなかったのが残念です。
すてきな作品を鑑賞するだけでももちろん楽しいのですが、ギャラリーの良いところは、気に入った作品を購入できることですよね。いつか私も好きな作品を手元に迎えられるよう、お金を貯めたいと思います。
アートスペース上三条は、奈良市の三条通りとやすらぎの道交差点から南東へすぐの路地裏にあります。
やすらぎの道は歩道がかなりデコボコしているので、車椅子での通行にはかなりの注意が必要です。
駐車場の看板の下に、道順の矢印が掲示されています。左(東)へ曲がります。
ちょっと不安になる細道ですが、大丈夫です。
車椅子と歩く人とがすれ違えないところも一部あるので、前方をよく確認しつつ進みます。途中で左(北)へ曲がりますが、表示が出ているので判りやすいです。
曲がった先にあるアートスペース上三条。
1階のカフェでは、ドリンクやケーキが頂けます。アート作品を見たお客さんと作家さんが心地よくおしゃべりできるようにとカフェをオープンなさったそう。
カフェの中央には、大きなテーブル。
その周囲に、様々なテーブルと椅子が並んでいます。
ギャラリーを楽しんだあと、この居心地のいいカフェでゆったりと過ごしたくなりました。
アートスペース上三条のブログにて、展覧会スケジュールが確認できます。